2009年9月アーカイブ

地域が空港も整備新幹線も高速道路も欲しいということで、
公共事業がコントロールできなかった
(18日の記者会見で-前原誠司国土交通相)


日本航空から撤退報道があった、日本の国内空港中でも
丘珠空港の撤退は、日本の航空行政の現状を著しているといえるだろう。

札幌市郊外にある丘珠空港はそもそもずっと問題だった。
札幌という300万都市圏に空港が二つある。
ジェット機は少し遠い千歳、プロペラ機は丘珠という役割で
北海道内路線を担ってきたが、高速道路、高速バス、鉄道の高速化の影響で、
常に存在意義を問われてきた。

そんな中、ANA系のエアーニッポンネットワークは、
丘珠空港に発着できる機材がまもなく退役することや、
搭乗率の悪さ、冬期の欠航率の高さなどより撤退を表明。
道内路線も千歳に集約すると表明していた。

エアーニッポン:丘珠空港問題 撤退、自治体と協議--全日空 /北海道(毎日新聞)
http://mainichi.jp/hokkaido/news/20090908ddlk01020302000c.html

さらには日本航空も撤退を表明。しかし日本航空の場合は、
運航している子会社の北海道エアシステムの株式を
北海道庁や地方公共団体に売却。路線自体は継続することになる。
JALも15%程度は株式を継続保有するが、
機体整備や運航システム、チケットの発券などでのサービス継続のためで、
今後運営に積極的に関わることはなさそうだ。

丘珠空港は、官が空港を運営し、官の企業の路線しか就航しない
完全な官の空港になることになる。

今回同じように撤退する広島西飛行場にしても
元は広島空港だったものを、空港移転しても、なぜか空港運営を継続し、
コミューター空港として広島から四国・九州への路線を広げた。
しかしその運航を担ったJ-AIRは日本航空の90年代最大の失敗と言われている。
日本の地方間路線に、高い運賃を払ってまで、時間の節約をお金で買うニーズが
存在しないことが証明されたのだ。

HACは現在
丘珠空港 - 釧路空港、函館空港
函館空港 - 旭川空港、釧路空港、奥尻空港
を運航している。
函館-奥尻線は離島路線なので、補助金を付けて維持する価値があるかもしれないが、

丘珠空港 - 釧路空港、函館空港
は、北海道新幹線も建設中だし、釧路への石勝線・根室本線の高速化も進んでいる。
道東自動車道の整備もすすみ、利用率から言って間違いなく通行量が無料になる。
ここまで他の交通インフラが整備された状態で
維持する価値がある路線なのか、空港なのか。という話だ。

北海道は特に民主党が強い地盤なので地元国会議員の反発も予想されるが、
国のあるべき姿をデザインする作業に注目したい。

■JAL再建策、政治主導で見直し?...前原国交相
(読売新聞 - 09月17日 13:31)

バンクーバー、シドニー、グアム、サイパン、コナ、モスクワ、ミラノ、天津

日本航空の価値は以上の都市にしか無くなったと言って良い。
日本航空は本日路線撤退を打ち出した。
海外9空港、国内7空港の就航地から撤退するという。
上の8都市は、何か。

「日本航空のみが就航して全日空が就航していない都市」だ。
(日本の航空会社として)

それ以外の日本航空の就航都市は全て全日空が飛んでいる。
日本航空の「本当の存在価値」とは全日空では代替のきかない
就航路線に他ならない。
今回のリストラされた海外9都市のうち、
日本航空のみが就航していたのは
サンパウロ、メキシコシティ、ブリスベーン、
アムステルダム、ミラノ、高雄
と、6空港にものぼる。
「日本航空の存在価値」は14空港から8空港に減ったわけだ。

航空路の開設は
「二国間で何らかの交流を必要とする人が存在している」
ということであり、友好関係に非常に重要な意味を持つ。
例えば、冷戦時にも、アメリカとソ連の間には常に航空路があった。
ソ連が航空路を維持する目的に、
「重要な機密書類を機長の手荷物として運ぶ」
という目的があったにしろ、航空路の存在自体が、
国と国との関係として、最後の一線を超えていないという証左である。

外交問題が勃発したとき、相手国への抗議の意味を込めて、
「大使を召還する」という外交行為は外交の世界ではよく見られるが、
同じように米ソ間の関係が悪化すると、
航空機の乗り入れを禁止することもあった。

そうした意味で特にサンパウロ、メキシコシティは、
メキシコ、ブラジルという成長する大国との
友好関係を維持するために、
日本のナショナルフラッグキャリアとして、
プライドにかけても護らなくてはならなかった路線だ。
もちろん日本航空は今プライドなどと言っている状態ではないのだが。

最初に述べた8都市の中で、
グアム、サイパン、コナ(ハワイ島)は
観光路線で、日本の外交的利益は薄い。
つまりローマ、バンクーバー、シドニー、モスクワという3都市への就航
-つまり、イタリア、カナダ、オーストラリア、ロシアとの友好関係
こそが、「日本航空の真の価値」なのではないか。

しかし、であれば全日空にこの都市に就航してもらえればよい。
事実全日空は10/25より関西-大連線を復活させる。
日本航空が撤退するので、需給関係が改善させるためだ。

以前逆に
「全日空だけが就航していて、日本航空が就航していない都市」が
瀋陽とムンバイしかなくて驚いた。
自ら就航地、というマーケットを作り出せず。
日本航空というクジラにくっつくコバンザメのような
戦法を情けないと思ったのだが、
日本航空に「日本の翼」という気概が無くなった以上、
全日空というコバンザメにクジラになってもらう
しかないのかもしれない。

 前原誠司国土交通相は17日の記者会見で
「日本航空と全日本空輸の2社体制はこれからも維持しないといけない」と述べている。今までの官僚主導の政治であれば、
日本航空という国に忠実で外交にも貢献のある航空会社を、
路線を維持した上で、できるだけ問題を先延ばしにしていたことだろう。
「官僚主導ではなく政治主導」と意気込むのであれば
日本航空・全日空、それぞれが存在する意義を
きちんと定義した上で、日本航空を救う必要がある。
■日航に出資打診、アメリカン親会社も数百億円
(読売新聞 - 09月13日 20:39)
■アメリカン航空も出資打診=デルタと日航争奪戦の様相
■JAL、米アメリカン航空とも資本業務提携で交渉=関係筋

国交省=改革派/日本航空=守旧派というくくりは誤り-深刻な政治闘争へ

デルタ航空から日本航空への出資交渉が明らかになり、
国土交通省内部でもそれを後押しする動きがあるという
報道があったが、すでに日本航空と提携しているアメリカン航空も
出資を検討していることが明らかになった。

従来国際航空路線の選定は二国間の航空協議で決められていたが、
それを市場の自由競争に委ねようとする
オープンスカイ政策の進展が予想されている。
その場合、成田-米国間の競争が一層激しくなることが予想される。
現在日米間の路線には、
アメリカから4社(ユナイテッド、デルタ、コンチネンタル、アメリカン)
日本から2社(日本航空、全日空)
さらに以遠権を行使してチャイナエアライン、
大韓航空、シンガポール航空が参戦している。
需要があるからではあるもの、
さらなる過当競争がおこることは間違いない。
日米の拠点で合理的な再編を見込み、
今回のデルタ対アメリカンの出資合戦になっている。

しかも、今回の騒動、各所からの情報を総合すると、
日本の運輸行政の方向性を巡っての政治闘争であることが
明らかになりつつある。

■構造改革の一環だったオープンスカイ政策

そもそも、オープンスカイ政策に熱心だったのは、安部元首相。
安倍内閣当時重要課題の一つであった、アジアゲートウェー戦略構想は
安倍総理の言う「美しい国」日本のプレゼンスを示すため、
日本がアジアの中心となるべく、
「ヒト・モノ・カネ」が集まるよう、
日本を交通、教育、金融、貿易、文化のハブになるように
一層の自由化・国際化を進める意欲的なプランであったが、
安倍総理自体の失速や官僚の抵抗もあり、
ほとんどのプランが目に見える形では進まなかった。

アジア・ゲートウェイ戦略会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/asia/

アジアゲートウェー戦略構想の中でオープンスカイ政策は
最重要項目10個の最初に
「航空自由化(アジア・オープンスカイ)」に向けた航空政策の転換」
と詠われていたように。最も安部首相が注力していた部分であり、
同時に、既得権益を護りたい国土交通省・日本航空にとっては
「最も実現させてはならない政策」であった。

■アジアゲートウェーに反対した日本航空

アジア・ゲートウェーでは、羽田空港の滑走路増設に伴う、
発着枠の多くを国際線に回し、日本と世界を結ぶ国際線を充実させる構想であった。

これは、日本航空が30年かけて育て上げてきた、
国際線のハブ空港-成田空港の発着枠という権益を脅かす存在であった。
日本航空は「羽田の発着枠は多くを国内線に回し、地域振興に役立てるべき」と主張し、自分の持つ成田の発着枠の価値を維持しようとした。
これに国交省守旧派や民主党の労組系議員がのった。

今回JALへの出資を打診しているデルタ航空は、
日本航空の開業時に運航を受託した日本と縁の深いノースウエスト航空を買収している。成田空港の発着枠の1割を持ち、全米9都市、アジア11都市へのネットワークを持つ、
成田空港で3番目に大きな会社。羽田の国際化は是非とも阻止したいし、
阻止できないにしても、有利な条件で羽田の発着枠を取らなくてはならない。
そうした意味では、奇妙なことに日本航空・国交省と利害関係が一致するのだ。

今回の日航にデルタ出資を打診、国交省は賛成、という裏にあるのは、
こうした利害関係の一致があったと見るのが妥当だろう。
今回のデルタ出資観測は、国交省の守旧派が、オープンスカイ政策を
自らのいいように振り付け、骨抜きにしよう、というもくろみの観測気球にも見えるのだ。
しかし、国交省のやっていることは、民間会社に対する経営の干渉に他ならない。業界再編を促す、改革派のようなそぶりを見せても、騙されてはいけない。

■常に海外への飛躍を夢見た全日空

一方で全日空は84年にやっと国際線に参入できたものの、
成田の発着枠が確保できず相当に苦労をした。
94年に開業した関空で路線を増やしたものの、関西経済の失墜とともに失敗。
成田の発着枠が少ない悲哀を味わってきた。
今回の羽田拡張を「国際線の発着枠の増大」のチャンスとして、
日本のANAから世界のANAへの飛躍を夢見、羽田国際化の推進を主張してきた。
これは小泉・安部内閣の「民間でできることは民間に」
「日本(つまり東京)をアジアのハブに」という構想とぴったり合ったわけだ。
これを、自民党の構造改革論者や民主党の政策新人類が後押ししている。 
 

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・・・と述べたように、自民-民主の間でも政策が捻れている。
行政の国交省にしても元々は強固なオープンスカイ反対派で、
アジアゲートウェー構想を骨抜きにしてきたが、今回の政権交代で、
省内の権力も流動的になっている。民主党がどう動くのかによっては、
オープンスカイ推進派(つまり羽田国際派)が勢力を伸ばす可能性もある。

■航空政策と日本航空のあるべき姿を示せ

ここも捻れなのだが、現在日本航空と提携しているアメリカン航空も、
日本参入という意味では後発組。
日米路線は戦後まもなくから、
パンナム(85年にユナイテッドが権益を引き継ぎ)、ノースウエスト(デルタと合併)、日本航空の3社が独占してきた。
80年代の規制緩和で参入したのが、アメリカン、コンチネンタル、全日空の3社だ。

日本航空としてはすでに全世界に路線網を持っているので、あくまでもアライアンスは自社のネットワークを補完するもの、という位置づけであった。日本に権益をあまり持たず、アメリカ全土にネットワークのあるアメリカン航空は理想的な提携相手であったし、各社の経営戦略にあまり口を出さないワンワールドも理想的なアライアンスであった。

しかし、今その全世界への総花的に拡がるネットワークと大型機が、日本航空の経営の重荷になっている。
JALには現在二つのアライアンスの選択肢がある。
DELTA(米)と、AirFrance-KLM(仏・蘭)の入っているSkyTeamと組むか、
American(米)BA(英)の入っている、現在加盟のOneWorldの提携関係を深めるか、である。どちらも甲乙付けがたい。

アメリカでいうと、DELTAは東海岸にネットワークが偏るのが欠点だが、充実した南米ネットワークは魅力だ。現在日本航空は単独でニューヨーク経由サンパウロ線を運行しているが、南米をDELTAに任せることで身軽になれる。一方でAmericanは全米に充実したネットワークが魅力だ。
欧州で言うと、パリ・アムステルダムに拠点があるAirFrance-KLMは、観光客向けにも強い日本航空との共同運航の相乗効果が期待できる。25%を出資するアリタリア航空も含め、日本航空との路線の重複が多く、ロンドンのみ就航のBAに比べ軍配が上がる。

しかし、DELTAを初めとするSkyTeamと組むとなると、
成田空港の発着枠の過半数をSkyTeam連合が抑えるということになる。
どのような形であれ、羽田の国際化は間違いなく実現するし、実際各国との航空協議で、羽田線の開設が決まった国も多い。成田一辺倒のSkyTeam連合の未来は果たして明るいのだろうか。

述べて来たとおり、日本航空の問題は既に政治問題である。また、日本航空は20年以上前に民営化したにも関わらず、常に政治的な問題になってきた。
国民にとっては、オープンスカイ政策の実現は利益であり、オープンスカイ政策下で順調な経営を行えるナショナルフラッグキャリア-日本航空の存在も利益である。

どのような結末になるか、事態はまだ流動的であるが、
願わくば日本航空が政治問題になるのは、これが最後であって欲しいものだ。
■日航が詰め交渉、デルタ「500億円出資」打診か
(読売新聞 - 09月12日 14:33)

ノースウエスト航空を買収して
世界最大の航空会社になったデルタ航空が
JALに500億円の出資をするという報道があった。
日本航空は戦後まもない創業時、
日本人が航空機を飛ばすことが許されず、ノースウエスト航空が運行し、日本航空は航空券の販売するという変則的な体制になっていた。そそのころからの関係だが、70年代に日本航空が単独で
世界展開を始めてから疎遠になっていた。

現在日本航空は北米第2位の航空会社アメリカン航空と提携。
アライアンスもワンワールドに入っている。
デルタ航空のスカイチームに提携が変わるとなると、
大きなインパクトになる。

日本航空側のメリットとしては、
北米路線の効率的な運用や、
デルタ航空が成田をハブとしていることから、
北米からアジアへ向かう旅客への航空券販売などが考えられる。

デルタ航空側のメリットとしては、
アジア最大規模の航空会社との提携により
主力の太平洋横断路線の強化、
成田空港でのネットワークの充実、
世界的に需要が縮小する航空貨物事業の効率運用

ということでお互いにメリットはある。

しかし一方で
デルタ航空はアトランタをハブとし、ノースウエストのハブである、
デトロイト、ミネアポリス・セントポールを含め、
伝統的にアメリカ東部に強い会社。
現在提携中のアメリカン航空は、シカゴ・ダラス・ロサンゼルスをハブとし、全米をネットワークするにはアメリカンの方が理想的だ。

しかしデルタはすでに成田をハブとして
アジア11都市に就航し自前ですでにネットワークができている。
成田空港の発着時刻表を見ても、
日本航空とデルタとの提携で
新たにデルタのユーザに加わる就航地は台湾の高雄、中国の広州程度で、乗り継ぎの悪さに目をつぶれば、ジャカルタ・バリ・クアラルンプール・デリーが加わる。
ノースウエストのアジア便の一部運行を代替するのならともかく、これでは提携の影響は限定的な可能性が高い。

アライアンスの関係でもワンワールドは、
ある程度航空会社同士の独立性を尊重する、比較的緩やかなアライアンスとなっていて、アジアの加盟航空会社もキャセイ・パシフィックのみだ。
一方でスカイチームはすでに日本航空と提携のある大韓航空・中国南方航空が加盟し、マレーシア航空にも加盟観測がある。
日本航空が現在のような総花的なネットワークを維持するのならワンワールドが間違いなくベストなのだが、赤字縮小のためには、ネットワークを縮小し、他社との提携を探る必要がある。しかし、日本航空のネットワークはすなわち、日本国のプレゼンスにも直結する問題。すでに政治問題となっている日本航空が、そこまで踏み切れるかは疑問だ。

デルタとの提携が実現したら、日本航空にとって、ネットワークの縮小、アライアンスの組み替えによる今より小さな会社な会社になることになる。
報道にあるとおり、日本航空の年末までの必要資金は1000億円以上、デルタの500億の出資でもまだ足りない。デルタとしては、そこを政府系金融機関等に期待し、小さな出資で大きな果実を得ようとしているのだろう。背後にはアメリカ政界の陰もちらつく。
日本航空としてはこの条件をちらつかせ、アメリカン航空にさらに有利な条件を引き出せればベストだろう。
日本の政官財がフラッグキャリアに米系資本が入ることを受け入れられるのかどうか、また日本航空がどこまで瀕死の状態なのか、と言う辺りで綱渡りがありそうだ。

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