アリタリアは呪いにとりつかれている。解決できるのは祈祷師しかいない
2008年4月 アリタリア航空 プラト会長(当時)
エールフランス-KLMによるアリタリア航空救済策が、操縦士組合の反対で失敗したことを受けて
当時のアリタリア航空がそうであったように、今の日本航空も呪縛にとりつかれている。年金債務問題、不経済な航空機、頑迷な労組に加え、撤退を示唆すると、
地元自治体の反発も、当選した民主党議員とともにやってくる。
今回日本航空や同じように危機に瀕しているエア・インディア、
過去に破綻したアリタリア航空をはじめ、ヴァリグ・ブラジル航空、
スイス航空、サベナ・ベルギー航空、古くはパン・アメリカン航空まで、
ナショナルフラッグキャリアは、大体同じ原因で破綻のプロセスを辿っている。
親方日の丸的な高コスト体質、国の外交方針に引きずられた分不相応な海外展開、
一度開設した路線を撤退しない、資金繰りが悪くて
新しい機材に更新できず、燃料高になると急に採算悪化、
最後には、財務体質の悪さや、強健派の労組などが理由で
アライアンスや再編の波に乗ることができずに孤立して破綻。
という図式だ。
これを打ち勝つ方法を考え、日本航空の再生への道を探ってみたい。
JALは飛ばせば飛ばすほど赤字になっている。高コスト体質で、
運行コストはANAよりも1割ほど高く、ANAよりも大型機を使って飛ばしている。
日本航空は飛行機を飛ばす事が苦手な会社なのだ。
では、逆転の発想で「飛行機が飛ばなくても儲かる」ことを
考えていてはどうだろうか。
■コードシェアでコスト削減
日本航空の運航コストが高いのであれば、運航コストの安い航空会社と提携し、
その航空会社の便名にJALの便名もコードシェアしてもらえばいい。
成田空港のスポットは足りず、世界各国から就航要請があるのに
応えきれていない。そこで、JALの持つスポットを
各航空会社とJALの共同運航便に与えてしまえばいい。
JALが提携するOneWorldではマレブハンガリー航空、ロイヤルヨルダン航空、
南米のラン航空が、まだ日本に就航していない。
仮に提携交渉が続いているデルタ航空のあるスカイチームに
アライアンスを乗り換えたとしてもアエロメヒコ、チェコ航空、ケニア航空などがある。他にも日本に就航を希望する会社は山ほどあるのだ。
成田空港からの就航地が増えれば、利用者の選択肢も広まる。
さらに日本航空は、国際線でも日本国内から収益を上げられる。
キーワードは「グランドハンドリング」「カーゴ」「リセール」だ。
■世界有数のグランドハンドリング能力
まずは「グランドハンドリング」。
グランドハンドリングとは、航空輸送における地上業務の事を言う。
旅客の空港でのチェックイン、手荷物の預け入れ、
機内清掃、給油、マーシャル(航空機誘導)、プッシュバック、
運航支援など航空輸送の地上業務は多岐にわたる。
よく航空機を飛ばすことはF1のレースに例えられる。
着陸したら、できるだけ早くスポットに辿り着き、乗客を機外へ降ろし、
速やかに荷物を届け、旅客のチェックインを行い、手荷物を預かり、
給油や清掃、機内備品や機内食の搬入を行い、整備チェックをした上で、
旅客を機内へ誘導し、安全設備の説明や最終確認を経て離陸する。
飛行機のリース代は高いので、できるだけ一日に多くの時間を飛行しなくてはならない。となると、節約できる時間は地上での滞在時間だ。
着陸してから離陸するまでが本当の勝負であり、F1のピットインのような素早いスピードが求められるのだ。
そして日本航空は日本のグランドハンドリングで最大規模を誇り、JALグループ5万人のうち約1万人が従事しているとされる。
世界から航空会社を呼び寄せ、JAL便名にコードシェアし、
JALのスタッフが、グランドハンドリングを行うことで、
航空旅客、利益、空港の利用率とも確保できる。
■世界最大規模のカーゴが誕生
次に「カーゴ」
JANA-JALとANAが合併した新会社名として一部マスコミでも噂されたが、
航空貨物業界では来年春にJANAが誕生する。
2010年春、郵船系の日本貨物航空(NCA)が日本航空と合併。
日本航空のJAL Cargoと業務を統合する。
NCAは元々日本郵船とANAのJVとして85年に誕生した。
実質ANAの貨物事業を担ってきた会社なのだが、
2001年ANAの株式を郵船が買い入れ、提携を解消した。
世界同時不況で、JAL,NCAともに経営が悪化。
合理化のために統合が決まった。
ANAは単独で貨物事業を再構築し、日本郵便と提携
戦略的子会社ANA&JPエクスプレスを立ち上げたが、
日本郵便の経営の方向性が定まらないこともあり低迷。
那覇空港をハブとしてアジアの貨物ネットワークを築こうとしているが、
JAL+NCAに比べると規模の小ささは否めない。
NCAと統合した日本航空は今後提携する米欧の航空会社とともに、
大規模な航空貨物ネットワークを構築することになる。
航空貨物は、旅客機の床下の貨物スペースと
貨物専用機のスペースをいかに効率よく埋めてゆくか、
という部分に妙味があり、旅客会社と貨物会社は一体であった方が良い。
効率的な運航が実現できるかが鍵だ。
NCAは最新鋭の貨物機B747-8をまもなく世界で初めて受領する。
747-8は低燃費、環境性能も秀でていて、
新会社の大きなアドバンテージになるはずだ。
■日本で最も強いリセール
最後に「リセール」だ。
日本航空は日本最大の航空券販売者だ。
その源泉は航空券発券システム[アクセス]にある。
ANA系の[INFINI]に比べるとネットワークの規模が大きく、
周辺のソリューションも豊富だ。
ただの航空券の発券システムだと侮ってはいけない。
JALの営業力も加え、旅行会社のツアーや出張手配で
JALとJALのコードシェア便を使ってもらえるよう、
マーケティングを行い、最適な価格で提供することができる。
■リストラの後の再生計画は何か
世界中の航空会社をJALとのコードシェアで日本に就航させ、
日本での受入・貨物・日本国内の販売、
と外国の航空会社が得意でない部分を
JALが一手に引き受けることで、筋肉質な航空会社になる。
日航再生タスクフォースの結論がどう出るかはまだわからないが、
さらなるリストラが行われることは間違いない。
リストラ後に再生策を考えるとなると、
この3分野のいづれかは軸になるのではないかと見ている。


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