「羽田をハブ空港に」と前原国交相、橋下知事反発
(2009年10月12日17時37分 読売新聞)
日本にハブ空港がなく、仁川空港(韓国)が日本のハブになっている
-10/12 前原国土交通大臣、橋下大阪府知事と会見後のコメント
前原誠司国土交通相は12日、関西空港内のホテルで橋下徹大阪府知事と会談し、羽田空港を国際ハブ(拠点)空港として位置づけ、国際化を進めていく方針を示した。これは日本の航空行政にとってかなりエポックメイキングな事態が到来していると思われる。
■首都圏外の旅客がJAL・ANAに誘導される。
羽田空港は1978年の成田空港開業以来、台湾便や2002年からの定期海外チャーター便等の例外はあるものの、国内線専用空港だった。しかし、2010年10月の羽田再拡張後に
「内際分離の原則を取っ払って、羽田の24時間国際空港化を徐々に目指していきたい」(前原国交相)と、羽田は日本国内から世界を結ぶハブ(拠点)空港を目指すことになる。
現在地方から東京経由で国際線に乗ろうとすると、羽田で降り、バスや電車で成田まで乗り継がねばならず、不便極まりない。現在地方から海外へ行く
旅客の多くは、国内線と国際線が同じ空港で乗り継げる関空か、多くの空港へ路線が出ている韓国の仁川経由で、海外へ出かけている。
しかし、
関空は関西経済の低迷、伊丹との競合などから、多くの国内路線が伊丹へ集約。国際線も減少の一途をたどっている。橋下知事が空港を関西へ集約し、国内線を
増やし、国際線も増やし、仁川経由から旅客を奪い取ろうというのも、悪くない話なのだが、その会談で「羽田の24時間運用のハブ空港化」を表明した前原国
土交通大臣の方が一枚上手だったと言うことか。
これにより、地方から羽田経由で海外へ、という流れは加速するだろう。元々地方から羽田への路線は、多数あるので、これに国際線が加われば、日本を代表するハブ空港へ成長するだろう。
■足りない発着枠
しかし、問題は発着枠だ。現在羽田は年29.4万回の発着能力を持つが、すでにギリギリの水準まで路線が開設されてい
る。羽田空港は日本で唯一国交省に「小型機発着」を禁じられている。飛行機を飛ばす回数に制限があるのだから、機体が小さいと運送する旅客の量が限られ
る、という論理だ。
2010年10月にD滑走路が完成、29.4万回の発着枠が段階的に引き上げられ。最終的には2013年40.7万回になる。(fig-1)(fig-2)
(fig-1)現在と再拡張後の発着枠
(fig-2)羽田と成田の発着枠推移
その計算だと、発着枠は週3178往復から4323往復に、1145往復増える事になる。すでに182往復分は、各国との航空協議により、国際線 に回されることは確定しており、残るは963往復だ。現在の成田空港の処理能力は週2000往復弱なので、成田の約半分の路線を羽田に移すことが可能な計 算だ。
しかし、ハブ、というなら既存の空港の路線をを全て回す意気込みがないと行けない。例えば、50地域を結ぶハブ空港があったら結べる地域は 50×50=2500通りの組み合わせになるが、100地域を結べば10000通りの組み合わせができる。ネットワーク質は量の乗数なのだ。
■新幹線で代替できる
となると、既存の国内線を減らしてでも国際線の発着枠を確保しなくてはならない。
キーワードは「新幹線でできるところは新幹線で」だ。
すぐ思いつくのは、東北新幹線の青森延伸により、減便の避けられない三沢、青森線だ。これで週91往復を国際線に回せる。他にも2014年には北陸新幹
線、2015年には北海道新幹線が新函館まで延伸する。2019年には北海道新幹線が札幌まで開通するので、国内線の発着枠はどんどん減らせることにな
る。
また、秋田・大阪・岡山・広島等は、飛行機も早いが、新幹線でも便利な地域だ。減便を促すことで発着枠を確保できる。東京-大阪線は航
空会社のマイレージ施策的にも重要な路線なので、航空会社が抵抗するかもしれない。CO2排出削減の世論も高まっていることだし減便はやむを得ないのでは
ないか。
(fig-3)新幹線で代替できる国内航空路線
■ANAの一人勝ちが始まる。
羽田空港のハブ化で、ANAの一人勝ち傾向がより強まるのは間違いない。ANAは元々国内線で稼いだ利益
を、国際線の赤字で埋めるという経営をしてきたが、地方客を国際線に誘導することで、筋肉質な路線体型ができあがる。また、JR東日本と提携をしているこ
とも見逃せない。相次ぐ新幹線の延伸で航空路が少なくなり、ANAとJR東日本の競争関係は解消されている。さらに一歩進んだ提携-例えば新幹線へのマイ
レージ付与、新幹線へのANA便のコードシェアも考えられるのではないか。実際ドイツではドイツ国鉄と航空会社のコードシェアが行われている。
■JALの再生への影響は
JALの再生に関しては、影響はまだ流動的だ。国交省内にJALのタスクフォースができている以上、既に
JALは自力再建ができるレベルでないのは明らかだ。同時に今回の前原国交省の発言は、JALの再建や、タスクフォースとも何らかの関わり合いがあった上
での発言であることは間違いない。極端な話、羽田への集約・成田からの撤退もありうるかもしれない。効率化にはなるが、それによるネットワークや、今まで
投資してきた設備の損失は計り知れない。その辺りは今後また情報がでてくることだろう。
■スカイマークへの影響は
今回の決定で意外にも影響を受けそうなのがスマイマークだ。スカイマークは、1997年に創業、開業当初の羽田-福岡線をはじめ、神戸、那覇、千歳へ就航し、他の格安航空会社がANA傘下に入るのを横目に、日本で唯一の独立系格安航空会社として成長してきた。
今回の羽田拡張をチャンスとして、週20往復の発着枠を分配するように要求していたが、国際ハブ空港化というテーマの前には、存在感を示すことはできないだろう。
唯一、ANAがスターアライアンス、JALがワンワールド(スカイチームへの移籍の話もあるが)、というアライアンスに属しているので、ANA、JALではないアライアンスの航空会社と提携やコードシェアが組み安くなることは考えられる。
■成田空港は
そうなると、成田空港はどうなるのか。基本的に、貨物空港と格安航空会社やリゾート路線専用の空港になるだろう。アジアに
は、AirAsiaをはじめ、JetStar,Lion Air,VIVA MACAU,Cebu Pacific,春秋航空,JEJU
AIR等、効率的な運航で、格安運賃を実現している航空会社がたくさんある。彼らが成田に就航することで、日本便の絶対量が増え、日本に人が集まってく
る。成田は東京から適度に離れていて、貨物ターミナルとしても適地が多い。ただし、成田周辺のホテル産業は大打撃だろう。最近ではバンコクのスワナプーム
国際空港の開業により、ドンムアン空港周辺のホテルは壊滅的な打撃を被った。
■羽田空港は
今回の話は羽田空港にとってはもちろんよいニュースなのだが。課題も多い。現在の羽田空港は国内線専用空港として設計され
ている。2010年の再拡張に伴ってできる国際線ターミナルは、敷地面積約13万平方メートル、延べ床面積約15万4,000平方メートルの5階建て。
10の固定駐機スポットと10のオープンスポットを備え、総2階建てのエアバスA380にも対応、とそれなりの規模ではあるが、年間の処理能力は6万回
と、再拡張で増えた10.3万回に比べると少ない。となると既存のターミナルの転換や新設も検討しないといけない。機内食工場等国際空港に付随する設備も
急ピッチで整備する必要がある。
成田ではホテルが打撃だが、羽田は逆にホテルが足りない状態になる。しかし、羽田は東京に近いので、影響は限定的かもしれない。
また24時間化ということは羽田空港へのアクセスも課題だ。前に羽田空港土曜日の午前3時集合、5時半発の韓国弾丸ツアーに参加したことがあるが、皆終電
で羽田空港に来て、狭い国際線ターミナルにたむろし、難民キャンプのようになっていた。以前から議論されていることだが、羽田空港-品川や山手線、東京モ
ノレール等の24時間運転は議論になるのではないか。
■日本の国力を増す航空行政を
以前の「国交省=改革派/日本航空=守旧派というくくりは誤り-深刻な政治闘争へ」でも述べたが、日本の
航空行政の真の目的は、日本にヒト、モノ、カネが集まるよう、航空路を増やすことだ。そうした意味で安倍内閣のアジアゲートウェー構想は、羽田の国際化や
オープンスカイ等、極めて真っ当な事を述べていた。しかし、それが民主党内閣になり、JALが破綻しかけないと実現しないとは実に皮肉であり、残念なこと
だった。
国交省=改革派/日本航空=守旧派というくくりは誤り-深刻な政治闘争へ
すでに国の管理になったといってもいいJALは、日本の真の利益になる新しい形になることが望まれるのだが、その形が何であるのかはまだ霧の中だ。


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