LCCを手がけると確かにコストは下がりますが、品質も下がるんです。
我々は、安全で定時性が高く、サービスもいい航空会社でありたい。
LCCの発想ですと、品質が崩れてしまう気がするんです。
-日本航空 西松遥社長 2008年12月のインタビューで
ANAが2010年の新ブランドInspiration of Japanを発表した。
来年2/20にニューヨーク線に就航する新造機B777-300より
順次Inspiration of Japan仕様のサービスを展開してゆく。
http://www.ana.co.jp/int/svc/jp/new_brand_2010/
主なサービスとしては
・世界でも最もゆとりのあるシート
・個々の要望に合わせた機内食
・大きく、インタラクティブなTVモニター
・モニターで飲食物がオーダー可能
・温水便座
と言ったところで、日本らしく、高品質なサービスが並ぶ。
ANAはここ数年、世界でも有数のサービスを誇る
シンガポール航空(SQ)を文字通りひっくり返そうという
QSタスクフォースという組織があり、
必死にサービスの向上を図っていた。
今回のInspiration of Japanで、後ろ姿ぐらいは見えてきただろうか。
しかし、始まるのは来年2月だし、就航するのはたったの1機。
ANAは昨年国内線の上級クラス「プレミアムクラス」で、
「従来の座席を提供しているのに新型座席を利用できるかの
ように広告した」として公正取引委員会から排除命令を受けている。
広告表記に注意している様は感じられるが、同じ轍を踏んでまで、
なぜここまで大々的に広告を行うのだろうか。
これは間違いなくANAのJALに対する勝利宣言だ。
JALの再建プランでは、欧米線のビジネス客にターゲットを絞り、
リゾート線等をリストラして、再建しようとしていた。
しかしリーマンショック以降出張需要も減退し、
客の取り合いは激しくなるばかりだ。このタイミングで、
ANAが新しいサービスを新造機をひっさげてやってきたら、JALに勝ち目はない。
JALの再建プランにも影響が出るだろう。
相対的に国力の衰える日本では、JALやANAのような
高品質なフルラインサービスを手がけるプレミアムエアラインが
二社生き残るのは難しいだろう。
世界中見渡しても、プレミアムエアラインが同じ国に複数存在するのは、
アメリカ、中国、韓国、台湾、UAEぐらいだ。
あとは、カナダのカナダ太平洋航空も、フランスのUTAも、
オーストラリアのアンセットオーストラリア航空も
イギリスのブリティッシュカレドニアン航空やbmiも、
みな消えるか、他のメガキャリアに飲み込まれてしまった。
アメリカは人・モノ・カネの集まりや外交力が日本とはケタ違いだし、
文化・経済で焦点となる都市が各地に拡がっている。
そもそも、アメリカの航空会社はどこも、元々サービスが大ざっぱで
値段も閑散期には安めだ。
中国は政治が航空業界を支配しているし、北京・上海・広州・香港という四大ハブごとにメガキャリアがあるから併存できる。
韓国は、ナショナルフラッグキャリアであった大韓航空が酷すぎたのと、二社とも航空運賃は安いので、競り合ってうまくいっている。
台湾は、ナショナルフラッグキャリアのくせに墜落ばっかりして、値段も安い中華航空に、高品質なエバー航空が競り合ってバランスを取っている。
UAEは、首長国ごとに国が違うようなものだから併存できている。
しかし、日本は成田以外は国際線がさっぱり、バブルや、その後の円高の頃までは、
海外旅行を楽しむ余裕があったのだが、その後はさっぱりと来ている。
今後、プレミアムエアラインはANAとJALのどちらか一社に集約されるのではないか。
となると今のJALには闘う気力さえ残っていない。ANAの一人勝ちだ。
となると、JALの生き残る道はどこにあるのか。
最近のANAのサービスラインナップを見ると、「カスタムメイド」なものが目立つ。
例えば、国内線エコノミーの客でも、オプション料金を払えば、
ラウンジが使え、プレミアムクラスの食事を食べることができる。
ビジネスクラスの食事は、30種類以上から好きなものを好きな時に食べられる。
機内ではおにぎりの販売も始めた。
これらは、シンプルなサービスをベースに、顧客が必要に応じて、
オプションを追加する、という仕組み。従来のフルラインの航空会社にはない姿勢だ。
格安航空会社(LCC)のジェットスターは、毛布や枕の貸し出しから、
機内食まで有料だ。ANAのサービスへの姿勢は、ミニマムサービスの基準こそ違えど、
LCCと同じ発想に映る。
消費が飽和してきた時代、顧客は本当に
価値のあるものにしかお金を払わなくなっている。
となるとJALの目指すべき姿は、
ANAから一歩下がった、シンプルなサービスの合理的なエアラインではないのか。
次項ではJALの歩むべき道について考えてゆきたい。


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